数年前、協会の中で理学療法士の専門性や社会的な立ち位置をより高く確立するために、今の教育制度では問題があると理学療法士協会は考えていました。
医療の進歩に伴って現行の3年制カリキュラムでは不十分であり、最低4年間の教育期間は必要、専門学校は廃止して大学へ完全に以降するといった内容でした。
さらに医師と薬剤師同様の6年制教育が必要で、厚労省や文部科学省に働きかけようと本気で論争をしていたのです。かつての業界専門誌にも記述があります。
しかし最近ではそのような話は一切聞かなくなりましたね。肌感覚としてもそんな話は夢のまた夢。
臨床の現場で「教育」といえば、新人教育か臨床実習の2つの場面が身近にあるところだと思います。
先ず新人教育ですが、就職先にまかされています。教育に力を入れているところでは、リハ科全体の研修会も定期的に行われていたり、積極的に新人さんへの学会参加もアナウンスされています。
指導できるセラピストも多いです。知識や技術を継承して、アップデートするといういわば専門家としての「文化」が育まれています。
力を入れてないところに就職した時は、そういう機会はほぼないです。すると協会との距離もどんどん遠ざかって業界の情報は入ってこなくなり、最終的にガラパゴス化してしまいます。負の連鎖ですね。
次に臨床実習ですが、学生さんの指導をする指導者に対して毎年協会がおこなっている「臨床教育実習指導者講習会」というものがあります。
臨床実習の指導を行う理学療法士は、その研修を受けさえすれば、実際には誰でも指導が出来ることになります。
そもそも実習を受けるメリットにはいくつかあります。ここでは、指導者のガス抜きについて話します。
施設にはポストが多くありません。業界は若手が多く、ポストを獲得できなかった二十代、三十代のスタッフが沢山います。そういったエネルギッシュな時に患者さんを日々みるだけでは刺激が少なく、衛生的に問題が生じることがあるので、それを防止するために実習を活用するのです。
繰り返しになりますが、研修さえ受ければ誰でも指導者になれるということです。
どんな医療業界の教育体制については、医師と薬剤師は供給する量を調整していることも、市場価格(給与)を調整する意味でも大変賢いですね。
リハビリの業界はどの団体も同じような状態だと思いますが、これでは6年生どころか大学への完全以降も幻のように感じてしまいますね。
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